虹の発生過程について

何もなさず、何も感じずに生きられたらどんなにいいことだろう?

預言者

 prophet

 神のお告げを特別に聴き、人々に知らせることを職務とする者。予言者ではない。ヘブライ語ではnabiと呼ぶ。
 シャーマンもこれに類するが、特に古代イスラエルに現れた一団を指すことが多い。
 部族連盟の時代を経て、ダビデの元に統一された古代イスラエルであったが、ダビデの子ソロモンの死後、南北に分裂。
 以前から、ユダヤ人は本来信じていた遊牧の神ヤハウェの他に、バアルやアスタルテなど土着の神々への信仰に傾倒するようになっていた。これらの神々は農耕や商売に利益をもたらす要素が濃かった。
 預言者たちは「信じるべきはヤハウェのみ」と人々に立ち返るよう求めたのである。しかしそれはしばしば王権と対立した。そもそもエジプトから虐げられた人々を導き出した歴史からわかるように、「救いの神」ヤハウェは王などという「人の支配」を好まなかったのである。

 アッシリアが北イスラエルを滅ぼし約百年、やがて新バビロニアユダ王国を滅ぼすとその支配者層がバビロンに連れていかれるいわゆる「捕囚」と呼ばれる事件が起こる。国の滅亡以上に、これはヤハウェ信仰が破綻したのだという衝撃を与えた。
 聖書の理解によれば、預言者の警告にも関わらず、王国はヤハウェへの背信を続けた。ヤハウェはその罰として、王国を敵の手に渡したのである。
 この時代の預言者エレミヤは必ずかつての王国が復活し、帰ることがかなうのだという啓示を発した。人々にとってヤハウェが異教の神に負けておらず、神々に必ず勝利すると告げる預言は精神的な糧となった。

 紀元三十年ごろ、ユダヤ教の律法主義を批判し、パレスチナ中を旅していたナザレのイエス磔刑に処された。しかし死の三日後復活し、人々の前に現れたという伝承を「復活した救世主」だと信じる一派が出現する。彼らが後世キリスト教となる宗教を立ち上げていくわけであるが、その際イエスが救世主との証拠を立てるため聖書の中の預言書を引用した。たとえばイザヤ書53章の「苦難の僕」はキリストをさしているのだ――という風に。
 ユダヤ教では、イエス預言者であるが、救世主ではない。

 イスラームではムハンマドは610年、天使ガブリエルから神の啓示をさずかったと教える。
 ムハンマド預言者の封緘であり、彼のあとに預言者が現れることはない、と。
 イエス預言者であるが、救世主とはみなさない。彼は処女マリアから生まれたが、神の子としてではなくあくまで人の子として。
 クルアーンに登場する預言者は多くが聖書と共通するが、一部はクルアーンのみに見える。たとえばサーリフはアラブの民サムードに現れ、偶像崇拝をやめ唯一神への帰依せよと求めるが、信じない人々は神が預言者の徴として遣わした雌ラクダを殺してしまった。神の怒で、住民は町ごと滅ぼされた。