生まれ育った場所を離れたい気持ち
自分が生まれ育った場所に対する愛着って、持つのが普通なんだろうか。確かにそうあるべきだ、と求められるのかもな。故郷とは確かに懐かしいとか安心感とかいったイメージで語られることが多いよ。
でも人にとっては、故郷なんていうものは忌まわしい記憶や感情によって捉える他はないものだったりするのじゃないのか。
少なくとも僕の場合は、今すぐ生まれ育ったこの地を離れたくて仕方がない気持はある。片田舎だし、面白いものがないし、何しろ学校ではいい思い出がなかった。無論語り継ぐべき物がここにあるかもしれないし、別の場所からやってきた人にとっては、この町こそが住むに値すると思えるのかもしれないが、僕にとってはあまりそう信じられないだけの話。
故郷とすべきものは、別の地域だっていいし、日本でなくてもいい気はする。
日本人だからこそ日本以外のどこか遠くに憧れるものなんじゃないのか。自分達とは違う文化や風土のもとに生活している人々に興味を抱き、調べ尽くして、気づいたら彼らより彼らのことに詳しくなっている。
むしろそれが自然なんじゃなかろうか。自分が元から知ってると思込んでいるものを再発見して、改めて関心を持つってなかなか難しい。母国というのは、それを中心として世界を見渡すばかりではない。それに対する嫌悪感が──しばしば自己嫌悪と一体化するんだけど──自分の生まれた場所への固定観念なり偏見を抱かせてしまうものだから。
他の国に行って、そこの人たちと仲良くして、骨を沈める。そういう人生に俺は興味を持つし、あこがれている。でも、楽しいことではないだろうね。だって大抵誰かと一緒になって生きていく道には誤解や苦労が耐えず付きまとうものだから。自分が全く繋りを持たなかった異郷では尚更のことだ。
けど数世代経ったら、自分の子孫にとってやはりその故郷というのはやはり見慣れた、面白味のないものになってしまうのだろう。
けどやはり発見や驚きを伴わない人生には生きるための強い目的など現れてこないだろう。できることなら、僕は知らない故郷を見つけたい。できることなら、すがり付きたい。やはり、今いる場所を離れたい気持ちがそれだけ強いんだよな…。