虹の発生過程について

何もなさず、何も感じずに生きられたらどんなにいいことだろう?

杉山正明「モンゴル帝国の興亡」感想

 歴史を考察する上で、僕にとってモンゴル帝国はどうしても関心を向けざるを得ない国家だ。

 

 ユーラシア大陸の大半を手中に収め、巻き起こった戦争も数知れない。だが、モンゴル帝国は同時に多くの地域を洗練された経済システムによって結びつけ、違う文化間の交流を促進する役割も果たした。今から察ても、実に壮観というべき、魅力的な社会が構築されていったのだ。

 

 この本はチンギス以来のモンゴルの君主がどのようにして領土を広げ、教えてくれる。

 基本的に人種や民族の違いに関心を持たなかった征服者たちは、行く先々で人々を自分たちの仲間として「モンゴル」の枠組に組み込んでいった。例えば南宋の将軍として敵であるはずの呂文煥を、彼が政府との対立の果て降伏するとそのまま司令官として起用するなど、大胆と言うにも程が。
 彼らのやり方は、人種や民族の違いをことさら強調する現代社会においてこそ注目するべきではないのだろうか。


 中央アジアはモンゴルの征服以後イスラーム化が進んだし、元寇と呼ばれる衝突があったにせよ日中間の貿易がこれ以上ないほど盛んになるなど、モンゴル以外の文明が広がる契機にも。

 

 一体なぜこれほどの大事業を成し遂げられたのだろう? 歴史は時に人間の予想を越えて展開するものだ。僕みたいに無知な者には到底推測できない。けどモンゴル帝国が最初、たくさんの部族がわかれ争う場所、中国や西アジアみたいに確固とした権力体制によって支配されていなかった場所に存在した、という事実は見逃せないだろう。